Galerie GEEK/ARTは、スペインよりアーティスト、TERÁNの日本初個展「Fantasías de Picasso（ピカソの幻想）」を開催いたします。本展では、「もしピカソが江戸時代の日本を旅していたら？」という想像から生まれた新作12点を展示。テランは、葛飾北斎の世界を歩く架空の旅人＝ピカソを描き出し、時代や文化を横断する鮮やかな視覚的対話を展開します。作品には、色彩と構図、光と影の織りなすダイナミズムが宿り、観る者を時間を超えた創造の旅へと誘います。

コンセプチュアルな探求が技巧を凌駕することも多い現代アートの世界において、TERÁNは卓越した写実技術と即興的な感性を併せ持ち、独自の“ポップ・リアリズム”を築いてきました。その筆致は、ポップカルチャー、イラストレーション、スタイライズされたリアリズムを融合させ、単なるオマージュを超えて、再解釈と現実のあいだに新たな絵画言語を生み出しています。

「Fantasías de Picasso」は、伝統と現代、古典的なイメージとポップ・アートの美学を橋渡ししながら、TERÁNの芸術的アイデンティティを力強く打ち出すシリーズです。ピカソと北斎という2人の革新者が、異なる時代を越えて出会い、対話する。その想像力に満ちた空間は、私たちに過去を新たな視点で見つめ直すことの豊かさを思い出させてくれます。

デジタル技術が進化し、AIが芸術の創作にも関与する現代において、私たちは「芸術とは何か」「創造とは何か」、さらには「人間らしさとは何か」「リアルとは何か」といった本質的な問いに向き合わざるを得ません。情報があふれ、常に何かと「つながる」ことができる時代だからこそ、私たちは本当に大切なものを見失いがちになっています。便利さが加速する一方で、私たちは本来持っていたはずの「想像力」も失いつつあるのではないでしょうか。

TERÁNの作品は、そうした現代の風景のなかで、想像力の自由と芸術の根源的な力を静かに、しかし力強く伝えています。過去の芸術に敬意を払いながらも、そこにとどまらず、「今を生きる表現」へと私たちをつなぐ本展が、芸術とともに世界と対話し、未来への新たな可能性を拓く機会となることを願っています。